シェアオフィスやレンタルオフィスで法人(会社)登記をする方法
シェアオフィスやレンタルオフィスでの起業を考えている方の中には、最初から法人でやっていきたいという方や、今は個人事業主だけどいずれ法人としてやっていくつもりだという方もいるでしょう。
法人にするには法人(会社)登記が必要なのですが、シェアオフィスやレンタルオフィスでも法人(会社)登記ができるオフィスが増えてきています。
このページではシェアオフィスやレンタルオフィスで法人(会社)登記する方法についてお伝えします。
法人(会社)登記についての基本知識
そもそも法人(会社)登記とはどのようなものなのでしょうか。
法人(会社)とはどのようなものかをおさらい
まず、法人(会社)というのはどのようなものかを確認しましょう。
株式会社に代表される「会社」というのは、専門用語で「営利社団法人」という言い方をされ、会社法という法律に基づいて設立されます。「法人」というのは「法」律の規定にもとづいて「人」として扱うことだと考えていただければ大丈夫で、法人をつくることによって個人とは別の人と扱ってもらう技術で、設立すると法人名義で銀行口座を持ったりでき、法人の取引について個人は連帯保証などをしない限り責任を負わないといったものになります。
起業をするにあたって法人(会社)がいいのか個人事業主がいいのか
起業をするにあたっては、法人(会社)と個人事業主のどちらがよいのでしょうか。
メリットとしては、取引の規模が大きくなってきた際の節税のための方法が法人にした方が多いことが一つにあげられます。自分にかける生命保険や家族に払う給与や退職金を経費にできたり、赤字の繰り越しが個人事業主だと3年であるものが、7年間繰り越しができるため、固定資産を開業序盤で買い込んで減価償却が見込まれるような場合には有利ですし、交際費の上限も大きく異なってきます。
また何より、信用力という点で、きちんと会社にすることで本気で商売に取り組んでいるということを示すことができるため、取引ができる幅が広がったり、従業員を雇用する際に有利になることが予想されます。
もっとも、個人事業主で事業をやっていく場合には、確定申告や経理作業などの事務負担や、従業員を雇う場合の社会保険料などの負担が低いというメリットがあります。事業規模が大きくなるような場合には会社に、当面一人か少ない人数でできる範囲の仕事をやっていくという場合には個人事業に、という風な形で、事業を行うスタイルによって合っている合っていないということも分かれます。
会社を作るには登記が必要になる
会社を設立をするには会社法で「登記」が必要とされています。「登記」とは不動産の権利に関する事項や(不動産登記)、会社法で定められている事項(商業登記)などを公にするための制度です。
会社といっても本当にあるのかどうかがわからない状態では、相手としては安心して取引をすることができませんので、きちんと株式会社等が設立されるときには登記をすることによって会社の情報を公にできる状態にしなければならないのです。
レンタルオフィス・シェアオフィスで法人(会社)登記はできるのか
ではレンタルオフィス・シェアオフィスで法人(会社)登記はできるのでしょうか。
会社と聞くときちんと部屋を独立して借りていないと作れないイメージを持っている方も多いかもしれませんが、会社の設立についてはレンタルオフィス・シェアオフィスなどでの共同オフィスでの設立を禁止する法律はありません。なお、一定の許認可が必要な業種(人材紹介業や不動産仲介業など)で、独立した事務所を必要とするものについては会社は作ることができても営業のための許可がおりないということがありますので注意が必要です。
レンタルオフィス・シェアオフィスで法人(会社)登記をする方法
それでは、レンタルオフィス・シェアオフィスを利用して、実際に法人(会社)登記をする手順を見てみましょう。
起業する計画を練る
まずは、起業に関する計画を練ることからはじめます。特に融資などを検討されている方は、融資を受けるにあたって事業計画書を作成しなければ、日本政策金融公庫や銀行等は貸付を行ってくれません。
税理士や中小企業診断士など、開業に関する専門家などに相談を行いながら綿密な事業計画を作成しましょう。
シェアオフィス・レンタルオフィスの内覧・申し込み
この後に会社の定款を作成するのですが、会社の定款には会社の住所を少なくとも最小の独立行政区画(市区町村)で記載をする必要があります。
そのため、定款の作成に先立ってシェアオフィス・レンタルオフィスの内覧をして、オフィスを申し込みをすることになります。
このとき、契約をする前に必ず、今から借りるオフィスは会社登記が可能なのか、自分の会社名と同じ名前の会社がそのシェアオフィス・レンタルオフィスに入居していないかどうかは必ず確かめましょう。もし、同じ名前の会社がそこにある場合、あなたの会社はその住所を使って会社登記ができないからです。
オフィス契約は契約時は個人名義で行い、会社の登記がされてから契約者を法人名義に切り替えます。
定款の作成を行う
次に会社の定款(ていかん)の作成を行います。定款とは、会社に関する基本的な事項を定めたもので、会社法により作成が義務付けられているものです。
会社の定款には、
1.必ず書かなければならない必要的記載事項
2.書いておくと効力が発生する相対的記載事項
3.会社が基本事項として定める任意的記載事項
があります。
1.必要的記載事項では次の事項を必ず定めます。
①目的②商号
③本店の所在地
④設立に際して出資される財産の価額または最低額
⑤発起人の氏名または名称および住所
⑥発行可能株式総数
①の「目的」とはこの会社がどのような事をするか、という事を定めるもので、取引先が会社のための取引であるのかを判断するために記載がされます。
②の「商号」とは、会社の名称です。
③本店の所在地とは、会社の本店をどこにするかということで、記載の方法としては上述したように最小の独立行政区画である市区町村か、住所の記載をします。
市区町村単位での記載で良いとする理由は、細かい住所まで記載を要するとすると、経営が順調でオフィスが狭くなったので近場で引っ越しする、といったような場合に再度定款を変更しなければなりません。定款の変更の手続きは実はかなり面倒なのでこのような記載で良いとされています。
④の「設立に際して出資される財産の価額または最低額」には、いくらの出資をするかを記載します。
⑤「発起人の氏名または名称および住所」は会社設立にあたって設立のための事務を行う人のことを「発起人」に記入し、発起人になる人の氏名(発起人が会社の場合には名称)および住所を記載します。
⑥「発行可能株式総数」の記載も必要になります。株式というのは会社の持分のことをいい、1株いくらなのかを設定して出資する金額で割ると発行する株式の総数が決定します。発行可能株式総数は何株まで発行可能になるのかを規定しておくものです。
2.相対的記載事項には
①取締役会、監査役(監査役会)、会計参与、会計監査人などの期間設計
②株主総会招集期間短縮
③株式譲渡承認機関の別段の定め
④譲渡制限株式についての売渡し請求の旨
⑤取締役の任期伸長
といったものがあります。
①は設立する会社に取締役会や監査役などを置きたい場合には、定款に相対的記載事項として置かれる役職についての記載をすることになります。
②の会社に関する基本的な事項は、株主が集まる株主総会で決定され、招集には2週間前までに招集するとされているのですが、短縮するには定款で記載する必要があるとしています。
③④小規模の会社が一番関連があるのが、株式譲渡についてです。株式は自由に譲渡されることになると会社にとって不利益な人が会社経営に入ってくる可能性もあるため、株式譲渡をするのに誰かの承認を必要とすることを定めることができます。この場合、誰の承認を必要とするかは定款で定めることになっています。もし譲渡ができない場合には売り先を指定することになるので、こちらも定款で定めます。
⑤取締役の任期は会社法では2年とされていますが、2年未満としたり、上述の譲渡制限をするような会社の場合には10年に伸ばしたりもでき、その場合に定款で記載をすることになります。
3.任意的記載事項では代表的なものとしては営業年度や公告をする方法について規定をします。
会社といっても個人事業主と実態は大きく変わらないものから、大きな会社の子会社が設立されるような場合まで様々な事案を想定して会社法が作られています。
そのため、会社法に規定されている事項をすべて読み込むのは合理的ではないのですが、とはいえ事業がスムーズに進まなくなるのは問題です。またこの定款は認証という作業があり、認証にあたっては電子認証システムを利用することで印紙代の40,000円を節約することができ、そのためには行政書士や司法書士といった会社設立に関する専門家に依頼をすることも可能です。
シェアオフィス・レンタルオフィスの中には提携している会社法に強い行政書士や司法書士に相談ができるシステムがあるところもあったり、場合によっては行政書士・司法書士がシェアオフィス・レンタルオフィスに入居していますので、利用を予定しているところにサービスがないか、ない場合でもそういった専門家を紹介してもらえないかを聞いてみましょう。
実印等を作成する
定款の作成を専門家と相談しながら行うような場合には、確認をしてもらうのに時間が必要なので、同時並行して印鑑を作る作業をすることが多いです。会社も契約や銀行口座を作ったりするのに法人の印鑑が必要です。
通常は、法人の実印と、悪用されないための銀行印、通常の印鑑の3種類を作成します。 シェアオフィス・レンタルオフィスの中には印鑑をつくってくれる業者と提携して格安で作ってくれる場合もあります。
定款の認証を行う
定款が作成されると、次はその定款の認証を行うことになります。定款の認証は、本店の所在地を管轄する公証役場で行います。< /p>
前述したとおり、行政書士や司法書士で会社法務に関する専門であれば電子定款システムを持っているような場合があり、そういった方に依頼をして定款の認証をしてもらうと印紙代が節約できます。
出資金の払い込み
定款の認証を行うと、株式会社に入れるお金(出資金)の払い込みを行うことになります。定款で決めた発起人の人の銀行口座に振り込む形で行いますが、通帳のコピーを使うのでネットバンキングの口座は避けるべきです。
振り込みを行った銀行に「払込証明書」を作ってもらい、払込証明書と通帳の表・裏・振込が確認できるページをコピーしたものを用意して、ホチキスで一つにして契印を押すことになります。
商業登記をする
定款の認証が行われると最後に商業登記を行って会社の登記が終了します。商業登記は本店を担当する法務局で行います。
法務局に行くと不動産登記と商業登記の窓口が別々に用意されていますので(東京法務局ではフロアが違います)注意しましょう。登記申請にあたっては、商業登記申請書と添付書類をもって行うことになります。添付書類には、認証をしてもらった定款、払込証明書、その他取締役や監査役といった人の収入承諾書など、どのような会社をつくるかによって必要となる書類が異なります。
商業登記は法務局の管轄になり、専門家としては司法書士が専門家となります。こちらもシェアオフィス・バーチャルオフィス利用者向けに専門家が居る場合には積極的に利用するようにしましょう。
商業登記がされると法律上も会社が成立すると評価がされます。
会社登記が終わったら
会社登記が終わったら、そのまま法務局で商業登記簿を取得しておくことが一般的です。様々な取引にあたって提出を求められることもあります(シェアオフィス・レンタルオフィスの名義を法人名義に変えるのにまず必要になります)。
シェアオフィス・レンタルオフィスで法人(会社)登記をする場合の注意点
手続きとしては上記の通りなのですが、シェアオフィス・レンタルオフィスを利用する場合に注意しておくべきことはあるのでしょうか。
そのシェアオフィス・レンタルオフィスの評判を調べてみる
シェアオフィス・レンタルオフィスを利用するメリットの一つとして、会社を運営するにあたってのランニングコストを抑えることができるという点があります。
しかし、それは同時に世間には好ましくない事業をするときにも使いやすいということにもつながります。犯罪や社会問題になった会社の契約書の住所はシェアオフィス・レンタルオフィスだった、といったような事例も、もちろんそんなに多くはありませんがあります。
お客様が会社の住所をネットで検索したときにそんな事件が出てきたら、全く関係はないとわかっていてもあまり良い印象を持たれないでしょう。そのようなことも含めて、入居したいオフィスが入っているビルを一度ネット検索することもおすすめします。
専門家を利用できる場合には積極的に使う
会社については、書籍やインターネットの情報が充実しているように見えるので、一人でできてしまうと考えている方が非常に多いです。
しかし、このページも含めてなのですが、インターネットでは一般的な事柄しか記載できず、具体的なケースでどのような定款の作成が必要か、込み入った手続きがないのか、といったことは記載し辛いところもあります。
シェアオフィス・レンタルオフィスは、起業にあたって必要な各種専門サービスが充実していることも多くあります。特に税理士・司法書士・行政書士といった専門家に相談するための制度が充実しており、いつでも無料で相談できるようなケースもあります。
まとめ
このページでは、シェアオフィス・レンタルオフィスを利用する場合の法人(会社)設立の方法や注意点などについてお伝えしてきました。会社設立は一生に何度もある手続きではないので、慎重に行いたいです。
定款の作成など慎重な手続きがある上にシェアオフィス・レンタルオフィスを利用する場合固有の問題点もありますので、専門家に相談しながらすすめるなどして確実にすすめていけるようにしましょう。