
1. バーチャルオフィス登記とは?仕組みと自宅登記との違い
「バーチャルオフィス登記」とは、物理的なオフィススペースを持たずに、バーチャルオフィス事業者が提供する住所を借りて、その住所で会社や法人の登記を行う方法です。たとえば自宅でアプリ開発をしている方にとって、自宅の住所を公開せずに法人登記できるのは大きなメリットです。
バーチャルオフィスの仕組み
バーチャルオフィス事業者は、都心の一等地などにオフィスを構え、その住所を複数の利用者に貸し出しています。利用者は月額の利用料を支払うことで、その住所を法人登記や名刺、ウェブサイトなどに記載できます。実際にその場所で仕事をするわけではなく、あくまで「住所だけを借りる」イメージです。郵便物や宅配便が届いた場合は、バーチャルオフィス事業者が受け取り、契約内容に応じて利用者に転送したり、スキャンしてデータで送ったりといったサービスを提供します。電話番号の貸し出しや、電話応対の代行サービスなどを提供している場合もあります。
本当に登記できるの?
はい、バーチャルオフィスの住所を利用して法人登記を行うことは、法的に認められています。会社法上、法人登記には「本店の所在地」を定める必要がありますが、この本店所在地は物理的な場所である必要はなく、バーチャルオフィスの住所でも問題ありません。ただし、すべてのバーチャルオフィス事業者が登記可能な住所を提供しているわけではないので、利用前に必ず「法人登記可能」と明記されているか確認が必要です。
自宅登記との違い
会社設立の住所として、自宅を本店所在地として登記することも可能です。バーチャルオフィス登記と自宅登記の主な違いは以下の通りです。
プライバシー
自宅登記の場合、登記簿謄本に自宅住所が記載され、誰でも閲覧できるようになります。バーチャルオフィス登記であれば、自宅住所を公開する必要がなく、プライバシーを守れます。
コスト
自宅登記は費用がかかりません。バーチャルオフィス登記は月額利用料が発生しますが、物理的なオフィスを借りるよりはるかに低コストです。
信用性
自宅住所よりも、都心の一等地などバーチャルオフィスの住所の方が、取引先からの信用を得やすい場合があります。
郵便物
自宅登記の場合は郵便物が直接自宅に届きます。バーチャルオフィス登記の場合は、転送やスキャンなどで受け取れるサービスを提供しています。
事業内容
自宅登記はほとんどの事業で可能ですが、バーチャルオフィス登記は許認可が必要な一部の事業(例:不動産業、人材紹介業など)では認められない場合があります。これは、許認可の条件として「専有スペース」や「物理的な事務所」が求められることがあるためです。
このように、バーチャルオフィス登記は、自宅住所を公開したくない、初期費用を抑えたい、信用力のある住所を使いたいといったニーズを持つような方にとって、有効な選択肢となります。
2. 会社設立でバーチャルオフィスを選ぶメリット・デメリット
会社設立の住所としてバーチャルオフィスを選ぶことは、コスト削減やプライバシー保護など、多くのメリットをもたらします。しかし、デメリットも存在するため、慎重な検討が必要です。
メリット
コストを大幅に削減できる
物理的なオフィスを借りる場合、保証金や敷金、内装費、毎月の家賃、光熱費など多額の費用がかかります。バーチャルオフィスなら、月額数千円から利用できるケースが多く、会社設立時の初期費用やランニングコストを大きく抑えられます。
都心一等地などの住所を利用できる
自宅や地方に住んでいても、東京の銀座や渋谷といったビジネスの一等地にあるバーチャルオフィスの住所を利用できます。これにより、会社の信用力向上や、クライアントからの信頼獲得につながる可能性があります。
プライバシーを守れる
自宅住所を法人登記に使用すると、登記簿謄本を通じて誰でも自宅住所を知ることができます。バーチャルオフィスを利用すれば、自宅住所を公開せずに済むため、プライバシーやセキュリティの面で安心です。
郵便物対応などのサービスが利用できる
バーチャルオフィスの多くは、届いた郵便物や宅配便の受け取り、転送、スキャンなどのサービスを提供しています。自宅にいる必要がなく、効率的に郵便物を管理できます。
法人用の銀行口座を開設しやすくなる場合がある
最近はバーチャルオフィス住所での法人口座開設が難しくなっている傾向がありますが、信頼性の高いバーチャルオフィス事業者を利用し、事業実態を示す資料を整えれば開設できる可能性が高まります。事業の実態を明確に説明できるよう準備しておくことが重要です。
手続きが比較的簡単
オンラインで申し込みが完結するバーチャルオフィスが多く、比較的スムーズに契約できます。
デメリット
許認可が必要な事業には向かない場合がある
前述の通り、宅建業、建設業、人材紹介業など、許認可の条件として物理的な事務所スペースが求められる事業では、バーチャルオフィスでの登記が認められない場合があります。事前に許認可の要件を確認する必要があります。
物理的な作業スペースがない
バーチャルオフィスは住所を借りるサービスであり、基本的に作業スペースはありません。自宅やコワーキングスペースなどで作業する必要があります。会議室などをオプションで利用できる場合もあります。
銀行口座開設や融資のハードルになる可能性がある
一部の金融機関では、バーチャルオフィス住所での法人口座開設や融資に対して慎重な姿勢をとる場合があります。事業の実態や信頼性をしっかりと示すことが重要です。
会社の信頼性を見極める必要がある
中には悪質な事業者や、実態のない住所を提供する業者も存在します。信頼できるバーチャルオフィス事業者を選ぶことが非常に重要です。
郵便物の転送にタイムラグが発生する
郵便物はバーチャルオフィスに届き、そこから転送されるため、手元に届くまでに時間がかかります。急ぎの郵便物が多い場合は、転送頻度が高いプランを選ぶか、注意が必要です。
これらのメリット・デメリットを考慮し、ご自身の事業内容や働き方、将来の展望などを踏まえて、バーチャルオフィス登記が最適な選択肢かどうかを検討しましょう。
3. バーチャルオフィス登記がおすすめな事業と選び方のポイント
バーチャルオフィス登記は、特に物理的な事務所を必要としない事業形態に非常に適しています。IT関連事業や、クリエイティブ関連事業などが良い例です。
バーチャルオフィス登記がおすすめな事業
Webサービス・IT関連事業
アプリ開発、システム開発、Webサイト制作、SEOコンサルティングなど、オンラインで完結するビジネス。
コンサルティング事業
経営コンサルタント、ITコンサルタント、キャリアコンサルタントなど、クライアント先やオンラインでの打ち合わせが中心のビジネス。
デザイン・クリエイティブ関連事業
グラフィックデザイン、Webデザイン、イラスト制作、ライティングなど、自宅やコワーキングスペースで作業が可能なビジネス。
ECサイト運営
オンラインショップでの商品販売。商品の保管・発送は別途必要になりますが、事務所住所としてはバーチャルオフィスを利用できます。
セミナー・研修事業
会場を借りて実施したり、オンラインで開催したりする形式のビジネス。
士業
税理士、行政書士など(ただし、司法書士や行政書士では会則等で”独立した事務所要件”が課される地域があるため、事前の事務所要件の確認が必須)。
これらの事業は、クライアントとのやり取りや作業の大部分がオンラインやリモートで行われるため、固定の物理的オフィスを持つ必要性が低いという共通点があります。
失敗しないバーチャルオフィスの選び方
バーチャルオフィスを選ぶ際は、以下のポイントをしっかり確認しましょう。
法人登記が可能か
最も重要なポイントです。サービス内容に「法人登記可能」と明記されているか確認しましょう。
住所の信頼性
都心一等地など、ビジネスの拠点として信用が得られやすい住所であるかを確認します。
運営会社の信頼性・実績
運営会社の設立年数、運営実績、利用者数などを確認しましょう。
料金プランとオプション
月額料金だけでなく、初期費用、郵便物の転送費用、会議室利用料などのオプション料金も確認します。
郵便物の転送頻度と方法
郵便物がどのくらいの頻度で転送されるか、転送費用はかかるか、スキャンサービスはあるかなどを確認します。
契約期間と解約条件
最低契約期間や解約時の条件を確認しておきましょう。
これらのポイントを踏まえ、複数のバーチャルオフィスを比較検討し、ご自身の事業規模やニーズ、予算に最も合ったサービスを選びましょう。
まとめ
会社設立時の住所として注目されているバーチャルオフィス登記は、コスト削減やプライバシー保護、信用力のある住所利用といった多くのメリットがある一方で、許認可事業の制限や銀行口座開設のハードルといったデメリットも存在します。
特に、Webサービス、コンサルティング、デザイン、ECサイト運営など、物理的なオフィスを必要としない事業形態には非常に有効な選択肢と言えます。地方在住のフリーランスの方にとっても、都心の住所を利用できることはビジネスの可能性を広げるチャンスとなります。
バーチャルオフィスを選ぶ際は、「法人登記が可能か」「住所の信頼性」「運営会社の信頼性」「料金プラン」「郵便物の転送頻度」といった点をしっかり確認し、複数のサービスを比較検討することが重要です。怪しい業者に騙されないためにも、口コミや実績を丁寧に調べましょう。
この記事で解説したバーチャルオフィス登記の仕組みやメリット・デメリット、選び方を参考に、ご自身の事業に最適な住所を見つけて、安心して会社設立を進めてください。あなたの新しいビジネスのスタートを応援しています!
ぜひ、バーチャルオフィス選びの一助になれば幸いです。

JUST FIT OFFICE マガジン編集部
投稿者紹介
はじめまして!当サービスの執筆を担当している「JFO マガジン編集部」です。宜しくお願いいたします。私たちは、オフィス探しに限らず、起業や創業、移転に付随する様々な情報をご提供させていただき、少しでも皆さまのお手伝いが出来ればと考え、執筆しています。
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